モータやソレノイドなど、誘導性負荷をスイッチングする回路には負荷と並列にダイオードを挿入します(下図)。
これをフリーホイールダイオードといいます(フライホイールダイオードと呼ばれることもあります)。
本記事では、フリーホイールダイオードの動作原理と必要性について簡潔に解説します!
✔️フリーホイールダイオードの動作原理
✔️モータ駆動回路にフリーホイールダイオードが必要な理由
✔️フリーホイールダイオードの選び方
フリーホイールダイオードの動作原理
フリーホイールダイオードはなぜ必要なのか?動作原理と合わせて解説していきます!
フライバック電圧の発生
まずは、Nch-MOS-FETでモータをスイッチングする単純な回路を考えます(下図)。
この回路では、FETをオンすると電流が流れモータが回転します。この状態でFETをオフすると回路の電流が遮断されモータが停止しますが、この時に問題が発生します。
モータの構成要素であるインダクタは、電流の変化を嫌う性質があり、自身に流れる電流が減ると元の電流を流し続ける方向に電圧を発生させます。これをフライバック電圧といいます。
フライバック電圧のエネルギーは、
インダクタのインダクタンス(L) x 電流変化/時間変化(di/dt)
で算出します。
本回路では、FETがオフすると電流は一瞬でゼロになりますので、時間あたりの電流変化率はほぼ無限大です。よって、非常に大きなフライバック電圧が発生し、FETが破損します。
このときインダクタはVddを基準とした電圧を発生させる電源と等価です!
(左図がFETオン時、右図がオフ直後です)
フリーホイールダイオードの役割
この問題を解決するために、モータと並列にダイオードを挿入します。
これをフリーホイールダイオードといいます。
フリーホイールダイオードがあると、FETをオフした後も下図の経路で電流を流すことができます。
インダクタのエネルギーをモータの直列抵抗とダイオードの順方向電流VFでゆっくりと消費することによって、フライバック電圧のピークを抑制することができます。
フリーホイールダイオード両端の電位差は選定したダイオードの順方向電圧VF(0.6V程度の部品が多い)を超えることはありませんので、FETに印加されるフライバック電圧は、最大でもVDD+VFに抑えることができます!
デメリット
フリーホイールダイオードを接続すると、フライバック電圧のピークを抑制できる反面、インダクタのエネルギーを消費しきるのに時間がかかるというデメリットがあります。
インダクタのエネルギーはダイオードの順方向電圧VFおよび、インダクタの抵抗成分(小さい)を循環しながら少しずつ消費されますが、インダクタのエネルギーを消費しきるまでは、電流が循環し続け、モータに電力が供給され続けます。
つまり、フリーホイールダイオードの働きによって、フライバック電圧のピークを抑制できる反面、FETオフからモータ停止までににかかる時間が長くなります。
フライバック電圧のピークを抑制しつつモータ停止までの時間を早めるためには、コスト高にはなりますが、より大きなVFを持つツエナダイオードを用いたり、Hブリッジ回路を搭載して”ブレーキ”機能を使用する、などの方法があります。
Hブリッジ回路については以下の記事で詳しく説明しています!
フリーホイールダイオードの選び方
フリーホイールダイオードに流れる電流値
上記したように、インダクタの性質は“自身に流れている電流をそのまま流し続ける”ですので、ダイオードに流れる電流は元々モータに流れていた電流値を超えることはありません。
よって、ダイオードはモータに流す電流を許容できる定格を持つ部品を選定すれば問題ありません。
ダイオードに電流が流れるタイミングはモータ停止(スイッチオフ)時のみなので、モータをPWM制御する場合には、周期あたりの実効電流値で計算できます。
FETに流れる電流とフリーホイールダイオードに流れる電流
例として、上記回路にPWMパルスを入力した際にモータに流れる電流波形を下図に示します。FETオン時、FETに流れる電流を青線で、FETオフ時、ダイオードに流れる電流を赤線で表しています。
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